クリスチャン・ウイッテアン
マイクロソフトWindowsの東アジア・ヴァージョンは、幅広いユーザー基盤を持っている。しかし、多言語作業のための操作基盤としては、どのくらい役に立つのだろうか? 1994年秋、ついに、そのような作業のための、PC上で走るMS Windowsの興味深いプログラムがいくつか導入された。以下は、それらが実際の使用にどのように役立つのかについてのちょっとした情報である。
(この報告は、『電子達磨』第4号の一部である。WindowsとMac OSとの比較評価については、ウルス・アップによる同号の"From the Multilingual Battlefield (2)"(多言語の工場から)を見られたい)。
マイクロソフトの世界観は、『道徳経』で述べられるそれに似ている。
隣国相望み、雞狗の声相聞こゆるも、民老死に至るまで、相往来せず。
(隣国と相望める近きにあり、お互いの国の鶏や犬の鳴き声が聞こえ合うほど接していながら各自の土地に満足しきって、老いて死ぬまで、互いに往来しようとも思わない。)
マイクロソフトは、世界を、それぞれの言語、表記をもった、別々の国の集まりというふうに見ている。マイクロソフトはそんなふうに、使用する言語と同じだけの、自社製品のバージョンを売ることに満足している。……しかし、これらの局所化されたヴァージョン間で、簡単なASCIIの交換以上のやりとりができるとは考えていない。これは、マイクロソフトの販売記録にとってはいい結果になったであろうが、我々が本当に期待する製品を作成してこなかったことは確かである。マイクロソフト型の全体化は、このようにローマ帝国の行動原理、「分割統治」divide et imperaに沿ったものを意味する。それは世界が大きくなりすぎて同化できなくなるまではローマにとって都合のよい統治方法であった。
Windows用のWord 6の英語ヴァージョン(以下ウィンワードと呼ぶ)はVer.2からVer.6にヴァージョンアップし、拡張はされたが、まだいくぶん使用性が高くなっていくようである(もし、この状況が続けば、多分、本当に気に入ったものが手に入るまでには、少なくともVer.254まで待たねばならぬだろう)。一方、東アジア・ヴァージョンは、Ver.1.2からVer.5へとアップし、最新のものはVer.6である。Ver.5(高速道路で自転車に乗っているような感じだったが)とVer.6(かなり使えるようになってきている)の隔たりは、ヴァージョン番号の隔たりに反映されてはいない。もし、日本語か中国語ウィンワードのVer.5をお持ちなら、新ヴァージョンをちょっと見てみるべきだろう。たとえ旧ヴァージョンが気に入らなくても。
以上のような点をふまえても、何と言っても漢字を扱うには、ウィンワード6がWindowsで走る最も便利なワープロ・ソフトであることは認めなければならない。本質的にこのワープロは2バイトモードで完璧に動作する。このことは不必要で妙なフォーマットをしなくても、難なく発音符号や漢字を画面に表示できるということを意味する。一度文書の中に必要な文字を入れておけば、そのままで次にフォントを変えても、混同は起こらない。これをサポートするために、フォント選択ダイアログボックスから次の3つが選択できる。
ほとんどの場合、これは期待したように動くだろうから面倒はない。しかし基本となるテキストのためというより、発音符号のために異なったフォントを持つことになる。もちろん、これを自動化する方法をセット・アップすることができる。このアプローチの一つの欠点は、ウィンワード6ではある文字に関して、漢字から英字、あるいはその逆の変換ができない。この変換は時々必要になってくる。特に英語ヴァージョンで漢字を含むファイルを作成した場合(日本語版Windowsでは英語版のWord 6に対応していないので、これは中国語ヴァージョンのみに当てはまる)がそうで、このため私はこの変換を行う小さなマクロを書いた。このマクロはZenBase CD1に収録した私のウィンワード漢字ツールマクロ集に入っている。
英語以外の言語のためのキーボードドライバーをインストールしている場合は、問題はもっとやっかいになる。例えば、ドイツ語のキーボードドライバーを中国語ヴァージョンで使うと、ウムラウト記号を入れようとするたびに、ややこしい問題が起こる。ウィンワードはこの記号を漢字と判断し、次の文字を待つ。そして次の文字を入力すると、2つまとめてとんでもない漢字に変換してしまうのである。私の見つけた唯一の解決策は、英語キーボードを使うことであり、ウィンワード自身の発音符号のための内部割り当てキーでやっていくか(3つのキーを同時に押そうとして、指をいためないように注意すること)、あるいは自分独自に割り当てるかである。もう一度繰り返すが、これは中国語ヴァージョンのみにあてはまる。というのも、まさにターゲット市場の文化形態を反映して、日本語ヴァージョンでは、日本語ドライバーか英語ドライバーの選択しかないからである。これとは対照的に、中国語ヴァージョンは、22ものキーボード設計があって、そこから選べるようになっている。
読者は、そもそも私がなぜウィンワード6の東アジア・ヴァージョンが役に立つと考えるのか、と思うだろう。そこで、どういう長所があるのかを箇条書きにしてみよう。英語ヴァージョンの情報は豊富なので、東アジア・ヴァージョンの特徴に言及するにとどめておく。
こうは言いたくないが、競合他社がマイクロソフトに対抗するには大変な努力が必要となるだろう。
日本語版Windows 3.1の販売は昨年中、実に急速な伸びを見せた。そのため、最も人気の高い英語アプリケーションのいくつかについて、日本語化が実現した。ここではそれらのリスト・アップや評価は行わない。また、役に立つシェアウェアとフリーウェアがいくつか利用できるようになった。
「秀丸」は主にプログラミング用に考えられたエディタであるが、どんな単一フォントの簡単なテキトスファイルでも作動する。シェアウェアとなっており、永久ユーザーは4,000円を払い込む。なお、このプログラムには、日本語のバイナリから英語ヴァージョンを作ることが可能なちょっとしたツール(マルオ)が添付されている。
「秀丸」で私の目的にとって最も役に立つのは、grep機能である。これは、一群のファイルや、ディレクトリ・ツリー全体の検索を可能にするものである。ただ検索するものを選択し、grepコマンドをクリックするだけで、検索が行なわれる。その結果、新しいウインドウに該当するものが表示される。これを「秀丸」ではタグファイルと呼んでいる。検索結果表示ウィンドウの任意の行でタグアイコンをクリックすると、もとのファイルを開き、該当位置を表示してくれる。これは文脈の中での使用を研究する際、大変役立つ。
このWindows版「秀丸」は、ニフティサーブでダウンロードできるが、最近はインターネット上でも提供されている。現時点における最新ヴァージョンがZenBase CD 1に収録されている。
以上のプログラムは、JDICのMac、Xwindows、Windowsへの移植版と同じくanonymous ftpサーバ(ftp://ftp.monash.edu.au//pub/nihongo) から無料で入手できる。
また、この同サイトでは、ステファン・チュングのオンライン和独辞書JWP(フリーウェア日本語ワープロ)やその他に役立つ情報も提供されている。